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「ホームレスワールドカップ」:国と協会の器。 [映画]

初回公開時に見逃していた「ホームレスワールドカップ」が、ビッグイシュー7周年ウィークの「希望映画祭」で上映されるというので観てきました。
http://blog.livedoor.jp/big_7anniversary/

2006年にケープタウンで開かれたホームレスワールドカップ第4回大会に取材したこの作品は、何人かのプレイヤーを追って行きます。案内役はコリン・ファレル。

薬物中毒のため家を出て、ホームレスになり、更生プログラムを受けているアイルランドのGKダミアン。彼の母や監督には字幕が出ないのに、彼の英語には字幕が出るほど聴きとりづらい。
立ち直るためのステップとして「何者かになりたい」と代表入りを志願。
アイルランドのキャプテン、サイモン。薬物中毒のため兄弟を失い、自身も犯罪に手を染めた。

ケニアのキャプテン、アレックス。スラムに生まれ、トイレ掃除でなんとか生計を立てている彼らケニア代表は練習のためのピッチがない。スラムの子供たちの手を借りて、自ら土を掘り起こし、ミニサッカーのピッチを作る。「これで今後、子供たちもここを使ってプレイヤーを目指せる」 目標は優勝とプロ契約。しかしペナルティキックが猛烈にへたくそ。

スペインの62歳、ヘスス。若いころはレアル・マドリーにも所属していたという彼は元銀行強盗(!)。服役を経てホームレスとなり、現在はシェルター生活。アルコール依存症からの脱却を目指している。
ちなみに、チームのレベルとか、目指すところとか、このスペインが一番日本に近かったという印象(1勝してるけど…)

アメリカの若者、クレイグ。家族に見放され家を飛び出してホームレスに。ホームレスが「敗残者」とみなされるアメリカでは、路上生活は警察や一般人との戦いでもある。自己防衛のために「怒り」を身につけた彼は折に触れて「爆発」してしまう問題を抱えている。

アフガニスタンのナジブ。戦争でパキスタンのキャンプにのがれたが、「死んだほうがまし」な生活に耐え切れず帰国。家も家族も失った今フットボールが生きがい。「タリバン政権下ではフットボールをやっているだけで逮捕された。いつも見張りを立てながらプレイしていた」

ロシアのエース、スラヴァ。貧しい農村からサンクトペテルブルクに出てきたが、「住民票」がないと仕事さえできないロシアでは、国内で「不法滞在」の若者が多数ホームレス化しているという。ちーむの監督じしん、元ホームレスでいまだに「不法滞在」の身分。ロシアではホームレス問題はないことにされている。優勝して、自分たちの存在を国民に知らしめるのが目標。負けることは、考えていない。

メインの選手たちはこんな感じ。代表選考の過程から大会中、そして大会後までの彼らを入れ替わり追っていくスタイル。

それぞれの選手から各国のホームレス事情が浮かび上がる。受け入れ設備が整っている国、いない国。日本もたいがい状況は悪いが、アメリカやロシアの状態はそうとう厳しそうだ。またアフガニスタンのような特殊な事例もある。この映画には出てこないけれど、昨年のミラノ大会に出ていたカンボジア代表などは、いわゆるストリートチルドレンが中心だったという。

それぞれにドラマがあり、それぞれに印象深い。
確か以前テレビで紹介されていた時は、アメリカのクレイグが取り上げられていた。大会中にもラフプレイや報復行為、審判侮辱など「キレる」側面がそこここで爆発していた彼が、次第に仲間と協力することを覚え、プレイに集中することができるようになり、「怒るのも泣くのも疲れたんだ」と、穏やかな表情にたどり着くその変化は目を見張るものがある。

でも、実は私が個人的に一番感動したのは、アイルランド代表。の、扱いだった。
南アフリカに行く前、ホームレス・アイルランド代表は、(おそらく)ランズダウンで行われたアイルランドの代表戦(たぶんEURO予選)に招かれ、ハーフタイムに満場の観客に向かって紹介されたのである。フル代表と同じジャージを着て。あの、熱いアイルランドサポーターが彼らにエールを送った。

すごすぎるじゃないか、アイルランド協会。かっこいいぞ。

社会の片隅に追いやられ、路上で寝ている彼らが、「国の代表」として認知され国民に応援されて送りだされる。
数万の観衆の前で紹介されることが、彼らにとってどれだけ大きなことだったか。

しかも、大会が進んでいくうちに気付いたのだけど、ほかの国が大抵一種類のシャツしかもっていなくて、色が被るときにはビブスを使っているのに、アイルランド代表は「アウェイ・キット」を持っていたのである!
こんなとこ見てる人もなかなかいないだろうから書いておく。

ちなみに2006年大会では見た限りでオランダ・アイルランド・イングランド・パラグアイあたりが公式キットを着ていた。アメリカはこの年は違っていたけれど、昨年大会では公式キットになっている。
イングランドの代表は、マンUのコーチ陣からコーチを受けている。
残念ながら昨年の日本代表は、アディダスから日の丸の付いたウェアは提供されたものの、公式のキットは使えていない。コーチは一般のボランティア、フットサル元日本代表の選手が唯一大々的に支援してくれたフットボーラーだ。壮行会は区民施設で小さく行われたのみ。
また、費用不足から昨年の出場がまだ2度目。今年(リオ)は出場ならなかった。

南アフリカ大会では当時のムベキ大統領がパレードに顔を出し、ミラノ大会ではインテルとミランがバックアップ(選手はサンシーロを見学)、会場にマテラッツィなどの有名選手が顔を出した。

この差はなんだろう…

一概には言えないけれど、やはり
・フットボール自体の浸透度
・社会全体のホームレス問題・社会問題に対する意識
・企業(クラブ含む)の社会貢献意識
・フットボール協会が、どれだけ草の根フットボールに対して目を配れているか

が大きいような気がする。
日本代表は、ほとんど経験がないおじさんたちが主力。生まれたころからボールを蹴っている人がごろごろいる国とはやっぱり比べ物にならない。だけど、やっぱり「先進国」としてほかにそん色ないことができる協会でないと、「世界標準」は狙えないと思うのよね。
ひとつの小さなNPOだけががんばっても現状が限界だと思うのです…

来年の大会はパリ。リオより断然行きやすい。
しかもパリ大会の名誉大会委員長は我らがアーセン・ヴェンゲルときた。

昨年は手伝おうとしてとっても中途半端に終わってしまったので、来年もしBIが出場を目指すならもっと何か協力したいな、と思っている今日この頃です。

ミラノ大会の出場レポートはこちら
野武士FC活動ブログはこちら
月2回ペースで練習をしています(四谷)。ご興味ある方は、ぜひ練習に参加/見学に行ってみてください。

hinomaru.jpg
東京の壮行会。3人の代表選手全員が就職・路上脱出に成功しました。

フットボール好きの方にはぜひ見ていただきたい映画です。


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ついでに、野武士ジャパンのミラノ大会を追った「NONFIX」もまた再放送してくれないかな~
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コメント 2

ゆか

事実上「ホームレスがいない」というこの国では、
絶対に上映してくれないだろうなぁ…。残念です。
すっごく見てみたいです。
by ゆか (2010-09-17 15:38) 

たけうち

>ゆかさん
HWCのルールはちょっと変則的なので,フットサルよりさらにスピーディな感じで見ていても面白いです。
DVDが出ていますので、もしチャンスがあったら見てみてくださいね。
ちなみに、2006年ですが結構皆さんブブゼラならしてました(苦笑)

by たけうち (2010-09-17 20:37) 

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